終活は四つに分けて考える
終活という言葉は範囲が広く、何から手をつけてよいか分かりにくいものです。次の四つに分けると、進めやすくなります。
- もの/住まいの中の持ち物、衣類、写真、蔵書、思い出の品の整理
- お金/預貯金、保険、年金、不動産、負債、そして相続の考え方
- 情報/連絡先、契約しているサービス、口座やIDの所在
- 気持ち/医療や介護の希望、ご葬儀やお墓の希望、ご家族へのメッセージ
この四つのうち、ご家族がもっとも困られるのは「情報」です。どこの銀行に口座があるのか、どんな保険に入っているのか、誰に知らせればよいのか。ご本人しか知らないまま残されると、探し出すだけで数か月かかることがあります。
何から始めるか
もっとも取りかかりやすいのは「情報」です。持ち物の整理は体力が要り、お金の話はご家族と相談が必要ですが、情報を書き出す作業はお一人で、短い時間でも進められます。
おすすめの順番は次のとおりです。
- ご逝去を知らせてほしい方の連絡先を書き出す
- 加入している保険と、金融機関の口座を書き出す
- 毎月の引き落としがあるサービスを書き出す
- 医療・介護についての希望を書く
- ご葬儀とお墓についての希望を書く
- ご家族へのメッセージを書く
- 持ち物の整理に取りかかる
1から3までが済んだ時点で、ご家族の負担はかなり軽くなります。すべてを一度に終える必要はありません。
エンディングノートに書いておくこと
連絡先
ご逝去を知らせてほしい方の氏名、関係、電話番号。年賀状の束や携帯電話の連絡先だけでは、どなたに知らせるべきか、ご家族には判断がつきません。「必ず知らせてほしい方」と「後日でよい方」を分けて書いておくと、なお助かります。
加入している契約
生命保険、医療保険、火災保険、共済。会社名と証券番号、担当者の連絡先。保険は請求しなければ支払われず、ご家族が存在を知らないままになる例が少なくありません。
口座と資産
金融機関名と支店名、口座の種類。証券口座、不動産、貸金庫の有無。借入金やローン、連帯保証の有無も必ず書いてください。相続放棄の判断に必要な、もっとも重要な情報です。
デジタル遺品
パソコンやスマートフォンの中にある情報も、いまや立派な財産です。ネット銀行、ネット証券、電子マネー、暗号資産、有料の会員サービス、写真の保存先、SNSのアカウント。どのサービスを使っているかという一覧だけでも残しておいてください。
医療・介護の希望
延命治療をどこまで望むか、痛みの緩和を優先するか、どこで療養したいか、介護が必要になったときの希望。判断する場面でご家族が背負う重さを、ずいぶん軽くできます。かかりつけ医の名前も書いておきます。
葬儀とお墓の希望
どのような形式を望むか、誰に来てほしいか、菩提寺はどこか、遺影に使ってほしい写真、流してほしい音楽、納骨先の希望。ご家族が迷わずに済みます。
ご家族へのメッセージ
手続きの情報とは別に、伝えたいことを残しておく欄です。長い文章である必要はありません。ここが、ご家族にとってはいちばん残るものになります。
書くときの注意(重要)
エンディングノートには個人情報が集まります。書き方を誤ると、かえって危険な一冊になってしまいます。
パスワードと暗証番号は、そのまま書かない
キャッシュカードの暗証番号、ネットバンキングのパスワードをそのまま書き込むのは避けてください。ノートを盗み見られたり、紛失したりすれば、そのまま被害につながります。
書くのは「どのサービスを使っているか」という一覧までにとどめ、パスワードそのものは別の場所に保管する、あるいはご自身とご家族にだけ分かるヒント(いつも使っている手がかり、など)を書くという方法があります。パスワード管理の仕組みを使っている場合は、その旨を書いておけば十分です。
マイナンバーも書かない
マイナンバーは法律で取り扱いが定められた番号です。ノートに書き写す必要はありません。「マイナンバーカードは○○にしまってある」という保管場所の記載にとどめてください。
保管場所を決めて、それを伝える
ノートは、いざというときに見つけてもらえなければ意味がありません。かといって、誰でも手に取れる場所も危険です。
- 保管場所を一か所に決める(金庫、鍵のかかる引き出しなど)
- その場所を、信頼できるご家族お一人か二人にだけ伝えておく
- 銀行の貸金庫は避ける(相続手続きが済むまで開けられない場合があります)
- 内容を更新したら、その旨も伝えておく
むやみに人に見せない
お住まいに訪ねてくる方に見せる、施設の共用スペースに置いておく、といったことは避けてください。善意で預かると言われても、原則としてご家族以外にお渡しすべきものではありません。
遺言書との違い
エンディングノートには法的な効力がありません。財産を誰にどう分けるかを指定したい場合は、遺言書が必要です。
エンディングノートは、ご家族が困らないための情報と気持ちを伝えるもの。遺言書は、財産の分け方を法的に定めるもの。役割が違いますので、両方を用意しておくのが確実です。遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言があり、形式の要件を満たさないと無効になります。作成をお考えの場合は、弁護士や司法書士、公証役場にご相談ください。ご希望があれば専門家をご紹介します。
ご家族と話すきっかけの作り方
終活の話は、切り出しにくいものです。ご本人からは「縁起でもない」と言われそうで、ご家族からは「早く死んでほしいのか」と受け取られそうで、双方が黙ってしまいます。
切り出しやすいのは、次のような場面です。
- ご親戚のご葬儀に参列した帰り道に、あの時どうだったねと振り返る
- お盆やお彼岸、法要のあとで、お墓の話から入る
- 年末に、保険や契約の見直しという実務の話から入る
- ニュースや近所の話題を借りて、うちはどうしようかと尋ねる
- 終活セミナーに一緒に参加し、第三者の説明を聞く場をつくる
最初から結論を出そうとせず、「一度考えておこうか」で終えて構いません。回数を重ねるほうが、うまくいきます。
当社では、地域の会館や施設で終活セミナーを開いています。ご家族でご参加いただけますし、第三者が説明する場を借りることで話を切り出しやすくなったというお声もいただいています。事前相談とあわせてご利用ください。